2018年10月20日

「とっておきの大自然に向き合うと、
 地球人って気持ちになれる」宍戸開

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、俳優・宍戸開(ししど・かい)さんです。

 宍戸さんは1966年9月生まれ。出身は東京。高校・大学生の頃はアルペンスキーの選手としてインターハイなどの大会に出場。そして1988年に役者としてデビューし、テレビや映画、CMなどで活躍されています。現在はサーフィンや登山を通して、自然と親しみ、また写真家としても活動されています。
 今回はそんな宍戸さんに、スキーに登山、そしてサーフィンを通して感じた地球や、辺境の旅のお話などうかがいます。

自然と相談しながら

※宍戸さんといえば「ファイト! 一発!」でおなじみの、あのCMを思い浮かべる方も多いはず! ところで、あのCMはどうやって撮影していたんでしょうか?

「“ファイト! 一発!”を辞めてからもう10年以上経っていますね。1992年から2003年ぐらいまでやっていました」

●その期間が長かったから、皆さんの記憶にも残っているんですかね!?

「それぞれのタレントさんや俳優さんが、先輩役というか“お兄さん的存在”が長いスパンなんですよ。それで、合間に後輩が3年とか5年スパンで交代していくっていう感じなんですね」

●後輩は、いつも助けられる役ですよね(笑)!

「たまに入れ替わったりしてるんですけどね(笑)。西村和彦くんで5年、ケイン・コスギくんと5〜6年ぐらいかな」

●あのCM、まさにロケーションが、アウトドア! っていう感じですよね。

「初めはずっと日本で撮っていたみたいなんですよね。日本の国立公園的な、雄大な景色の場所だったんですけど、規制が厳しくなって日本ではもうできなくなったんですね。それで海外だと。アメリカをベースに考えると、きっちりした管理のもとであれば撮影が可能なので、渡辺裕之さんぐらいになってからどんどん海外での撮影になったみたいですね。
 基本的にアメリカ、カナダ、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、ベトナムとか。映画用の撮影機材がある国っていう感じですか。ハリウッド映画を撮っているようなロケ地に行って、大自然の中で撮影していましたね。だから怪我も結構、絶えないんですよ!」

●じゃあ、リアルにあのクライミングとかもやっていらっしゃったんですね! もともと、宍戸さんはそういうアウトドア・アクティビティみたいなものはお好きだったんですか?

「いや、アウトドア・アクティビティは、そのCM撮影がきっかけだったんじゃないかと。アウトドアはスキーとサーフィンを小さい頃からやっていましたけど、例えばクライミングとかロープを使って登ったり、アイスクライミングやスノーモービルやら、いわゆるアウトドア・スポーツは、“ファイト! 一発!”のCMをやるようになってから、やらせてもらったっていう感じですね」

●でも、スキーとサーフィンをやっていただけで、あんなに凄いアウトドア・スポーツが撮影でいきなりできちゃうものなんですか?

「だから役者がやるっていうことなんでしょうけど、もちろん、料理人の役なら包丁さばきを練習するのと同じように、そこまでの時間は取れないけれども、1〜2日前とか、前もって練習はしますね」

●何か、スキーで培った技術とか体験が活きたことってありますか?

「一番は、スキーもサーフィンもそうですけど、やっぱり大自然に触れているっていうことで、要するに、勝ち誇った気分にならないというか、(自然を)征服した気分にならないというか……。大自然と自分だったら、自分はもう、はなっから敵いっこないよっていう、敬う気持ちですかね。
 調子に乗ると、例えば海だったら流されたり、山だったら天気が変わって風で吹き飛ばされたり、暑いから半袖で行ったけど、帰るころには寒くてブルブル、みたいな……。そういうことも含めて、技術云々よりも、やっぱりアウトドア・スポーツは自然と相談しながらというか、“この場所、使わせてください”とか、岩に登る時に“思いっきり体重かけるけど、いいですか?”みたいな気持ちでやりますかね。そうしていれば、怪我が少ないっていうことですね」

●そういうものなんですね!

“地球人”を実感する

※宍戸さんは、スキーをきっかけに登山もはじめたそうですよ。

「きっかけは学生時代に、立山とか月山(がっさん)でスキーをやる時に、普通はリフトで登ってバーっと滑るから、登る、つまり上に行くってことに対して、“お金を払えば行けるんだな”と、罪悪感とかも全然なかったんだけど、立山の合宿に高校一年生ぐらいで初めて行った時に、だいたいひとつ400メートルぐらいのバーンを登るんだけど、スキーブーツを履いて登るとなると結構、時間がかかるわけですよね。そうして、スキー板を担いで何回も何回も上がって行くうちに、山の登り方をマスターしたというか。なるべく疲れないように、歩幅を狭めてゆっくり歩く……というか、スキーブーツを履いていると、それでしか歩けないわけですよ!

 そこで培ったのもあって、大人になってからいろいろとドキュメンタリーや山の番組だったりで登るようになり、“あ、スキーブーツを履いていないと、写真ももっと撮りやすいんだな”っていうこともわかったんです。それで最初にネパールに行った時は、山に登るというよりも、見た景色を心に焼き付ける。一番は、自分の心に突き刺さり、それを人に伝えられればいいなと思ったんですが、口で言うよりも、パッと見てもらった方が早いし。写真っていうのは凄くいいツールだなと思いますね」

●最近、小笠原にも行かれたそうですね!

「はい! 今年の6月26日がちょうど返還50周年で、サーフィンも兼ねて、記念の番組(に出演して)、小笠原の島というか山をトレッキングしたりサーフィンしたりしました。沖縄とかハワイといった南の島の海の青と、日本の伊豆とか磯の海の青、そのちょうど中間ぐらいの青が、小笠原のボニンブルーっていう海の青さで、“どうやったらこの色になるんだろう!?”っていう色なんですよ! 青色ではあるんですよ。でも、“青”色にもいろんな漢字がありますけど、一言では言い表せない色なんですよね。それで結局、ボニンブルーっていう呼び方をされているんだけど、そういう海の青さに出会えたのが嬉しかったですね。

 実はその6年前にも、ちょうど世界遺産に登録された翌年に(取材で行ったんですね)。その時は小笠原の海の中30〜40メートルぐらいの所にいるシロワニを水中写真に収めるっていう取材で行ったんですけど、その時となんら変わりがないんですよ。
 一番驚いたのは、自然が維持されているということと、人が増えている! なぜかと言うと、移住者! 今の小笠原の子供の数、超多いんですよ! 1学年に3クラスぐらいいるんじゃないかな。それだけ移住して暮らしていらっしゃる方が多いんですね」

●じゃあ、昔よりも賑やかになっていましたか?

「賑やかなんだけれども、いわゆるリゾート地みたいな派手さは全然ないですね。そこが一番、いいところじゃないですかね」

●サーフィンもされたということですが、どうでしたか?

「これがワイルドなサーフィンで、サーフィンの板を担いでひと山越えて行かないと巡り合えないポイントにガイドしていただいて行ってきたんです。
 スキーの話でも同様に、スキーを一本滑る大切さ、つまり自分の足で登って、スキー板を履いて滑る。そうすると、たった1〜2分で滑っちゃうんだけど、“もったいない、もったいない…”と思いながら、それを大事に滑るわけですよね。それでまた30〜40分ぐらいかけて登って、1〜2分で滑る。そういうことをやっていたんで、それと同じような醍醐味が(小笠原でも味わえました)。
 小笠原の海にも、1時間かけて歩いて登って降りて、山を越えて行くわけですよ。それで、行った先の崖の前に(サーフィンができる)ポイントがあるわけですけど、そういうところでやるとやっぱり、とっておきの大自然というか、自分だけの自然というか……。“地球人”になった気持ちになれるというか、(自然と)一体化しているというか……。朝起きて、夕方寝るような、野生生活というか……。そういう感覚が自分には合っているのかなと思いますね。都会生まれですけどね」

生き物らしさ!?

※宍戸さんが登山に持って行く必需品は「ナイフと箸」だそうです。箸は食べる時だけでなく、ヒモをほどいたりするのに使ったり、ナイフもほつれた糸を切ったり、さまざまな場面で利用できるからだそうで、さらに、コップにもなるような、深めの皿もあるといいそうです。少ないアイテムでいかに工夫して使いこなすかが、ポイントなんですね。
 では、宍戸さんが考える、自然の中に持っていかないほうがいいものは一体、どんなものなんでしょうか?

●シャンプーと石鹸も持って行かないほうがいいっていうことをお聞きしたんですけれども……。

「それは自然環境が破壊されちゃうからで、よくサーフィンでも、日本の海だとシャワーの場所で、シャンプーでゴシゴシやっているのを目にしますけど、確かに海水から出ると体がベタベタして洗いたいのはわかるんです。お湯で洗うのはまだいいんですけど、そこでシャンプーして、それが海に流れると、やっぱり海洋汚染になるし、ハワイは各ビーチに市でやっている備え付けのシャワーがあるんですけど、そこで昔はよくシャンプーしている人はいたけど、その泡はずーっと海に流れているんです。

 それと一緒で、山も結局、野山でやっていても、沢に流れ小川となり、大河に流れ着いちゃうから、その周りだけ植物が生えなかったり、サンゴが白骨化するみたいな現象が起こるから、単純な普通のシンプルな石鹸だったら、まだいいのかもしれないけど。ただ人間が人工的に都会で使っている物を、洗う時に使うのは……ましてや、コンディショナーまで持って行くなよ、みたいなね。

 もし、それで遭難してみなさい! シャンプーどころじゃないから! 遭難した場合のことを考えて、自分が持っていける最低限の物と、最低限の行動とか考え方とか。環境への影響を考えたら、装備もきちんとして管理して……ってやっている人もいるけど、自分が持って行って、持って帰れる物。なるべく軽く、最小限に、両手はあけてっていうのが基本だと思うんだよね。
 これは単純に、夏山だったらなるべくシンプルなほうがいいし、着替えも最小限で、1日はそれを着て、山小屋に着いたら着替える。着替える格好は、次の日に出かける格好でいいと思います。寝巻きとか持ってきちゃダメ!」

●でも、宍戸さんは俳優さんですし、それだけカッコいいので、例えば見た目とか、髪がグシャグシャだったり、ボサボサなのを見られたりとかは、気にならないんですか?

「全然! 何を気にするんですか!? 例えば野生の動物なりライオンなり、たてがみが水や雨に濡れてベチャッとなると変に見えるけれども、変に見えるようなところからシュウゥーっと掻き上げる動きを入れれば、その動きがカッコよく見えたりするんです。いつでも綺麗に爽やかにっていうことじゃ、生き物らしくないわけですよ」

異文化に触れる

※テレビ番組の取材などで、国内外のさまざまな場所を旅されている、宍戸さん。いきなりヒマラヤに行ったこともあるそうですよ! そんな宍戸さんですが、旅先での多種多様な環境の中で、日本とのギャップを感じることはなかったのでしょうか?

「それは子供の頃に結構、体験済みなんですよ。なぜかというと、私の母親が冒険好き、旅好きで、わずか10歳の時、1997年に中国に行って、そこで亜細亜大学の中国史研究班に合流して行きました。夏休みの一ヶ月半ぐらい、北京ベースで人民公社などいろいろ行ったりしましたが、そこは色のない世界ですよ。人民服のモスグリーンと紺色と黒と灰色。車も自転車も全て黒。お寺だけが赤い朱色。その中で何週間か過ごし、中盤の2週間ぐらいはモンゴルのウランバートルに行って、ウランバートルから大体6〜7時間の、いわゆるゴビ砂漠のタヒ(モウコノウマ)っていう馬がいる、牧場みたいなゲル、いわゆるパオに1週間ぐらい暮らしたりとか、そういうことをやっていたんですよ。そこでわずか10歳、小学5年生の時に生まれて初めて地平線とかを見たりもしたんです。

 だから日本に帰ると、“日本は何でお店に入れば水が出てくるんだろう?”とか、“何でスイッチをつければ電気が点くんだろう?”とか、そういうギャップは一通り経験していたんです。中学・高校はスキーをやっていたから大自然の雪山に行っていたんで、都会と地方の差も十分、体験しているし、例えばブラジルでも、アマゾンの奥地で暮らすシャバンテ族に会いに行ったりとか、吹き矢でピュッとしたり。

 はたまた、アフリカのケニア、タンザニア、いわゆるセレンゲティのちょっと南下にあるンゴロンゴロっていう自然保護区があるんだけど、そこにハッザ族っていうのがいるんですよ。彼らは弓矢と鍋のようなバケツと鉈(なた)、この3つだけで生きているんです。ちょっと前まではスッポンポンだったんだけども、文明が入ってからはみんな布巻きみたいな、テルマエみたいな格好をしてやっているんだけどもね。
 たまたまその時は成人の儀式みたいな大人の儀式があって、何日かかるかわからなかったんですけど、ヒヒ狩りに同行したこともありましたね。結局、2日目の夜に獲れたんで、3日間で帰って来られたんですけど。そんな体験をして日本に戻ってくると、やっぱり一皮も二皮も剥けて。だから、鉛筆のような人生なんですよ……どんな人生!? って感じでしょ(笑)」

●どんな人生なんですか(笑)!

「(笑)。ギャップというほど大きいものを味わわなくても、異国に行ったり、普通の旅行でも何でも、異文化に触れることこそ、人をおおらかにする。人を和やかにする。人を怒りから解き放つ、っていうことになるんじゃないかな」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 違いを知る事で優しくなれる。最小限を知る事で強くなれる。今回宍戸さんのお話を伺ってそんな事を感じました。そしてその優しさと強さが宍戸さんの格好良さの秘訣なのかもしれませんね。

INFORMATION

 宍戸さんのInstagramには、風景写真をはじめ、魅力的な写真が満載です! ぜひ、ご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. ガッツだぜ!! / ウルフルズ

M2. EVERY TEARDROP IS A WATERFALL / COLDPLAY

M3. CATCH THE WAVE(NEW MIX) / Def Tech

M4. 道 / 宇多田ヒカル

M5. FREEDOM / WHAM!

M6. OPEN ARMS / JOURNEY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」